例会部会
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第153回例会報告

例会部会 中前 正: 10月号

 日頃、プロジェクトマネジメントの研究、実践、検証等に携わっておられる皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回は、8月に開催された第153回例会についてレポートいたします。

【データ】
開催日: 2011年8月26日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「伝わる」コミュニケーションがP2Mを加速させる!!
~「コミュニケーション」が変われば「ドラマ」が変わる~
  ドラマチックコミュニケーション
講師: 株式会社MANY ABILITIES 代表取締役 野原秀樹氏

 8月の例会は、久しぶりに、コミュニケーションをテーマとする講演を企画しました。講師にお招きしたのは、18歳でジャズダンスを始め、日本バレエ協会、松山バレエ団等、多数の作品に出演、その後、演劇やバレエのエッセンスを活用した「ドラマチックコミュニケーション」を企業、病院、大学等で展開しておられる野原秀樹氏(以下、「講師」と表現)です。今回は普段とは異なり、会場の机を並べ替えて6人ほどのグループを6つ形成し、演習形式で進行していきました。

 最初に、『自己紹介タイム』と称し、一人につき1分ずつ、自分のことについてグループ内の他の参加者に説明する時間を設けました。その後、何名かに感想を聞いたところ、「印象に残った人と、残らない人がいる」という意見が出ました。印象に残った要因としては、「共通の興味があった」「ツカミを意識して話していた」「笑顔が印象的だった」などの意見がありましたが、このように、日常的なコミュニケーションについてじっくり考える機会は、普段それほど多くないのではないでしょうか。講師いわく、「コミュニケーションとは、『気持ち』を伝え合うことである、そして『双方向性』を意識することである」、とのことです。

 次に、『私・あなたゲーム』というゲームを行いました。これは、10~15人ほどで輪を作り、「わたし」と言った後、「あなた」と言って他の人を指していくゲームです。誰かに「あなた」と指された人はそれを「わたし」と言って受け止め、別の人を「あなた」と言って指していきます。慣れてくれば、複数の「わたし・あなた」のセットを、1つの輪の中で同時に展開させますが、そうなると、誰かに「あなた」と指されてもそれに気づかなかったり、あるいは誰にも指されていないにもかかわらず、指されたものだと思って「あなた」と別の人を指してしまったり、ということが生じます。このゲームの感想としては、「伝えきることが大切と思った」「アイコンタクトが重要」「メッセージを受け取る体制をとっておくことが大事」といった意見がありました。

 さらに、『YES・NOゲーム』というゲームも行いました。二人一組になり、「YES」と言う人、「NO」と言う人を決めておき、お互い、いろんな表情やゼスチャーを織り交ぜ、「YES?」「NO!」のみの問答を繰り返します。最初はテンポよく繰り返せても、そのうちゼスチャーがワンパターンになってしまい、どのように自分の気持ちを伝えればいいのか、困ってしまう人も出てきます。

 『私・あなたゲーム』『YES・NOゲーム』をやってみると、コミュニケーションには、「バーバル(言語)的」なものと、「ノンバーバル(非言語)的」なものがあることに気付きます。そして、コミュニケーションの場では、いろいろ工夫して(ときには「体」を動かして)、いかに非言語で情報や意思を伝達できるか、が重要です。参考として、メッセージの受信者が発信者の内容を受け止めるのは、見た目(視覚情報)からが55%、話し方(聴覚情報)からが38%、話の内容(言語情報)からが7%だという「メラビアンの法則」が紹介されました。

 最後に、12~13人ほどで輪を作り、順番は定めず、一人ずつ「1!」「2!」「3!」……と発言していき、「15」でゴール、というゲームを行いました。別の人が同時に「7!」「7!」というようにかぶってはダメ、「1」からやり直しです。「15」までいくので、2回発言する人が何人か必要です。参加者には、アイコンタクトや空気感を察知して発言することが求められます。最初は失敗しましたが、何回かチャレンジするうちに無言の一体感が生まれ、無事、時間内に成功することができました。

 ある出来事に対し、私たちがどのように「対応」するかによって、もたらされる「結果(ドラマ)」は変わってきます。今回のテーマである「ドラマチックコミュニケーション」では、「対応」=「コミュニケーションそのもの」ととらえ、「受け止める」「伝える」「判断し行動する」という3つの要素を、なるべく念頭に置くことが重要だということです。

 今回の例会では、3つのゲームを体験しながら、「ドラマチックコミュニケーション」のエッセンスに触れることができました。例会終了後は、普段日常的に行っている、プロジェクトメンバーやステークホルダーとのコミュニケーションのありかたついて、一度じっくり考えてみようと思いました。
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