PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (4)
〜「出る杭」を打たれない、ノウハウ〜

芝 安曇:7月号

「出る杭は打たれる」のが日本社会の文化である。個人でこれに逆らうことはできない。何しろ日本は「やっかみの社会」で、「出る杭を打つのが日本人の数少ない楽しみ」だから仕方がない。どの企業でも社員は蛸壺に入って、懸命に頑張っている。頑張っても全員が頑張っているから、「頑張りが当たり前」で、ほめられたり、評価の対象になってない。

これでは息抜きが欲しい。昔は赤提灯に行って気晴らしをした。日本人は面白い性格があり、洋風レストランでワインを飲むと話題が高尚になる。ちゃんと高尚な話ができる教養を持っているのに驚かされる。でもこれではガス抜きにならない。最近は変わってきたが、昔の教育では弱いものいじめは男の恥であった。そのことを心得ていた。だが強いやつを叩くのはいじめでない。ガス抜きの対象は上司である。しかし身近に「出る杭」があったら、これも格好の標的である。

給与は高いほうがいいに決まっている。同期生でも外資の社員と給料の差が出ても全く気にしないが、同じ会社の同期生と100円でも差をつけられると、狂ったように怒りまくる。これは給料の問題ではなく、評価の問題だからである。したがって「出る杭」ガス抜きの対象となる。
そこで「理想のプロジェクトマネジャー自在氏の経験則」を借用する。

「出る杭」の諸法則を披露すると、
第一法則:打たれない杭の法則
芝: 自在氏さん日本では「出る杭は打たれる」というのが常識化しています。でもあなたのように優秀な方は「出る杭」として叩かれたのでしょうね
自在: いや、私も人間ですから叩かれたら、精神的に参ってしまいます。でも、仕事をするということは、どうしてもでしゃばる場面が出てきます。そこで考えました。でしゃばっても「叩かれない杭」があることに気がついたのです
芝: 魔法の杭でしょうか
自在: 簡単です。人の嫌がる仕事をするのです
芝: 例えば何でしょうか
自在: お客さんに「叱られに行く」仕事です。
会議で「お客さんが怒っているよ」と問題が出されると、誰も行きたがりません。私はそこで質問をして問題点を少しずつ把握していきます。これらの質問で次第に本質に近いことが見えてきます。すると皆は「自在氏さん、あなた行ってくれませんか」と言いだしっぺに難問解決を押し付けます。
芝: そこでどうしますか
自在: 無理々々行かされた実体を演出します。「私で駄目でしたら、誰々さんお願いします。誰々さんお願いします」と後で悪気地を言いそうな人物にお願いします。ここが裏技です。「文句を言うなら、お前やれよ」といえる状況をつくっておくのです。
芝: なるほど。それで!
自在: この機会は次々にやってきます。その時に「XXさん、今回はお願いします」とやります。すると「いや、残念ながら緊急の仕事をしているので期待に添えなくて残念だ」と言う答えが返ってきます。若し、影ででも悪口を言ったら次回はお前だよというプレッシャーを与えておきます。人の嫌がる仕事をすることで、叩かれなくなります。
芝: よく分かりました。ところで表業は何でしょうか
自在: 表業は問題を正しく解決することです。問題が解決できない場合は顧客に叱られっぱなしです。これは出る杭ではなく、解決しなくてはならない杭です。それでも「問題が解決」してしまえば影口は言われますが、裏技のお陰で叩かれなくなります。その上顧客との信頼関係ができますと、別な杭を持つことになります。
芝: それは何という名の杭ですか。
自在: 「出すぎた杭は叩かれない」という杭です。これで表業が身につきます
芝: 分かりました。
第二法則:「出すぎた杭は打たれない」ですね。
ありがとうございました
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