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「日立評論」という雑誌があります。今回1000回記念講演会が行われました。日立製作所のフェローで小泉英明さんという方の話が面白かったので、このエッセイで都合のよいところだけを紹介します。小泉さんは脳の働きを研究しています。何かの刺激が、脳のどの部分に働きかけ、脳の活性化の程度を測定している話を聞きました。
暗算をさせると脳のある部分が活性化され、測定器上に赤く表示されます。暗算では数字が脳の一部に蓄積され、その上に数字を入力させて暗算を繰り返し、結果をまた蓄積しているからです。では、次に電卓で同じ問題をやらせます。すると脳の同じ部分は何の反応もなく、赤くならず青いままです。電卓はその中に数字を蓄積するパーツがあるから脳を必要としないのです。人間の幼児は世界中の言語を聞き分ける能力を持っています。米国ではLとRの子音の違いを記憶できます。ところが日本語そのものにRの子音がありませんから、幼児の脳は「効率よく」不要な機能を抹殺します。従ってわれわれ大人の日本人はこの相違を聞き分けることができないそうです。
電卓を使っていると暗算機能がなくなり、街のマーケットのおかみさんも金銭登録機がないと商売ができなくなります。更に困った問題が現実に起きています。戦後長い間会社に対する信頼感が強く、社員は会社以外のことに興味がなくなってしました。これは会社人間と呼ばれています。会社人間は、その会社にいるときは活性化され、生き生きと働いています。そかし、その会社から離れると、どうも勝手が違い、活躍できなくなります。もしかしたら自分の会社で働くこと以外の機能が「効率よく」抹殺されてしまったのかもしれません。
P2Mの普及活動をしていますが、聞かれる問題があります。資格を取ったらどんなメリットがありますか。給料でも上がりますか、等の質問です。会社の今の仕事に役に立たないものは不要だとの考え方です。脳が効率を求めるのと同様に、人間そのものが効率好きです。しかし「資格を取ったら今まで自分になかったこの新しい能力に賭けてみる」という生き方もあります。
そこで提案したいのです。40年の会社人間(結構です)のあとに退屈な20年の自由人生活が待っています。会社人間のときは時間を金に変えており、なお退屈もしませんでした。自由人はこの「退屈な時間」を金で買うことになります。このときも脳は効率的に働きますから、不要な機能は急速に削除されます。脳の無駄機能削除はパソコンと違って(パソコンは無駄を削除しないと動きが鈍くなる)、不要ごみを自動削除するためのもので、脳の機能を高め作業をしている」と解釈できます。削除しているから新しいことがインプットできます。裏返して言うと新しいインプットを欲しがっているといえます。
文化に関する記事がありました。「文化とは多くの人がその問題に関係し、時間の流れの中で無駄が省かれ、よいものだけが残されて行く過程の中で育つものだ」という解説でした。同様なことが人間につてもいえます。人にはそれぞれの文化があります。ご自分が創り出した文化です。長い人生の中で不要なものが削除され、洗練されてきたもので、心ひそかに感じるものです。挑戦を続けた人はより洗練された文化が得られるのではないでしょうか。人間の豊かさは金や地位だけにあるのではなく、自分の文化の中にあると感じています。
日本の将来は文化の輸出にかかっています。フランスは世界一です。次が英、米、独とつづき日本は6位と日経2005.11.30.やさしい経済コラムに出ていました。今韓国は文化輸出に国(日本より多くの予算を取っている)を上げて取り組んでいます。韓国も歴史のある国です。日本人も既得権やモノつくりばかりにこだわらず新しいことに取り組みましょう。
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