日経新聞コラムニスト西岡 幸一氏のコラムに「部屋の中の象」を追い出せ(日経紙2005.6.6.)という記事がありましたので紹介します。
『昨年、斬新的な知的成果とユーモアを備えた研究に送られるイグ・ノーベル賞の心理学賞に輝いたサイモンズ米イリノイ大教授らの実験論文はこんな具合いだ。
あなたはビデオでバスケットボールに興じる人を見ている。この画面に突然ゴリラが画面を横切り、胸を叩き、すぐ立ち去る。バスケットはそのまま続けられている。
このビデオを見た人にゴリラを見たかと聞くと、答えはまちまちである。しかし、白組プレーヤーのパスの数を数えるような仕事を与えると、半数の人はゴリラに気がつかない。すなわち人は集中しなければならないことがあると、目の前の異変に気がつかない。
ではゴリラより多きいい象ならどうか。「部屋の中に象がいる」という寓話がある。巨大な象が部屋にいる。もちろんただ事ではない。それは分かっているが誰も象を追い出そうとしない。見えない振りをしている。そのうち見慣れて、最早部屋の中の象に驚かなくなる。社会の不祥事は皆この現象である。』
この記事がずっと頭の中に残っていました。私はエンジニアリング企業でプロジェクトマネジメントを専門業務として顧客にしごかれてきました。長年の経験論で「顧客のプロジェクトマネジャーが優れていたプロジェクトはすべて成功している」という事実です。製造業にPMを普及したいと考え勉強しました。2年間でJPMF製造系SIG「卓越したビジネスモデルのつくりかたとその実践」、経済産業省「研究開発の高速化」の報告書を書きました。製造業のPMは研究開発で活用されることがわかり目的を達成しました。
その後IT系のPMがエンジ系と全く異なる印象を持ちましたので、JPMFのIT-SIGに」参加し、IT業界の専門家から2年間話を聞かせて貰いました。「IT業界の失敗事例の大部分は発注者側にある」。「何故、お客さんから要求仕様が提出されないのか」。「仕様も決めないのに何故一括受注ができるのか、一括受注でリスクを丸呑みできるのか」という疑問は解消されませんでした。SIGの皆さん方は日常のことで、私の疑問は素人のたわごとと受け取られていたように思いました。しかし、このコラム「部屋の中の象」を読んで「IT業には大きな象が住みついているのではないか」と考え、先月の「今月のひと言」で読者の皆様方に私の疑問点を投げかけました。おかげさまで2名の方からご親切な回答を頂きました。今月のオンライン「ディスカッションコーナー」でコメント掲載いたします。更なるコメントがあれば活発な議論を展開して頂くことを期待しています。
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