デニマルさん
「決断力」
羽生善治著、角川新書
2005年08月05日、3刷、201ページ、686円+税
著者は、1970年生まれのプロの棋士であるが、将棋を指さない人でも多くの人は知っている。略歴を見ると改めて、著者の凄さが分かる。中学生でプロの棋士となったのは、過去に加藤一二三氏と谷川浩司氏に次いで3人目である。19歳で竜王位を獲得し、その後破竹の勢いでタイトル戦を勝ち抜いて、7年後の1996年には七大タイトル(竜王、名人、棋聖、王位、王座、棋王、王将)の全てを独占してしまった。これは将棋界始まって以来の快挙である。特に、名人位は徳川時代から続く400年近い歴史あるもので、その間に名人の地位を得た人は、僅か25人であると冒頭に紹介している。現在、最強の棋士と言われているが、この本でも分かるとおり大変な勉強家でもある。才能プラス努力が強さを支えている。
決断力(その1) ―― 直感力か!? ――
著者は、将棋を指す上で一番の決め手は、決断力であるという。その判断のための情報は、多ければ正しい決断が出来るかというとそうではない。経験によって考える材料が増えると、迷ったり、心配したり、怖いという気持ちが働いて判断を鈍らせることになる。これは将棋に限ったことではなく、全ての判断や決断に当てはまることである。この判断を助けているのが、人間の生まれ持った直感力である。著者は、直感の7割は正しいと書いている。昔、五味康祐氏(作家)が、「直感は過たない、過つのは判断である」と言っていた。
決断力(その2) ―― 集中力か!!? ――
全ての勝負の世界は、真剣である。真剣とは、文字通り本物の刀剣で生死をかけたものだ。これは相手も全く同じ条件で、実力が互角の場合は、ほんのチョッとしたミスや集中力の差が勝敗を左右する。人間はどんなに訓練してもミスは避けられない。そのミスを最小限にするか、リカバリーを直ぐ冷静に出来るかの集中力に掛かっている。集中力を養うにも訓練が必要であり、昔から精神を集中して無の状態になるのがいいとされている。著者は感情のコントロールが出来るときに集中力が高まり、実力発揮につながると書いている。
決断力(その3) ―― 情報力か!!!? ――
先に、判断のための情報は多くても正しい決断が出来ないと書いている。しかし、情報には色々なものがある。著者は、「選ぶ」情報と「捨てる」情報があることを指摘している。情報過多の時代である。その中から自分に必要な情報は何かのキチンとした価値判断がなければならない。情報は集めることではなく取捨選択して、自分のものとして使うことである。情報は知識として自分の思考やアイデアを加味して始めて自分の役立つものとなる。
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