デニマルさん

「ひとりずもう」

さくらももこ著、小学館行
2005年09月01日、2刷、212ページ、1,000円+税

さくらももこ、と言えば「ちびまる子」の著者であることは日本中の老若男女、誰でもが知っている。この「ちびまる子」は、1987年から連載されて以来、長く人気を保っているスーパー漫画(というより、国民的キャラクター)となっている。一方著者は漫画だけでなくエッセーの分野でも隠れた才能を発揮して、過去に書いたものは殆どベストセラーになっている。1991年に「もものかんずめ」を書いて以来、「さるのこしかけ」「たいのおかしら」「あのころ」「さくら日和」等々がある。勿論その間、「ちびまる子」等の連載漫画を書き、年に数回は海外旅行にも出掛け、そして小学生の母でもあるスーパーレディである。

さくらももこ?      ―― 名前の由来 ――
著者は、小さい時から漫画家を志望していた。高校時代から、自分の実力を試す意味で投稿を続けた。しかし、現実は厳しく入賞すら果たせず、諦めて以前から好きだった落語家か漫才師に方向転換を考える。お笑い芸人になった時の芸名は、自分の好きな花の名前を幾つか並べて、苗字も名前も同じようにかわいい「さくら、もも」とした。だが、芸名は決まってもチャンスはない。芸人も諦めてOLを覚悟すると気持ちは落ち着き、漫画家へのチャレンジする勇気がわき投稿を再開した。そのペンネームが「さくらももこ」である。

ももこは晩生だった??    ―― 青春物語 ――
この本は、著者の小学校から短大卒業までの青春時代を書いている。小中学校時代の話題は、大体が友達や学校でのイベント(運動会や学芸会や夏休み等)や勉強が中心である。しかし、中学時代は体の成長が著しく、自分自身の成長(変化)と友達との対比には敏感に反応する時代である。特に、女性はこの時期に女の子から女性に成長する。著者は、晩生であった。しかも遅れることを神様に懇願していたが、少数派となってからは逆に早く人並みになることを願った。この辺りが、エッセー風漫画を地でいっているようで和める。

「エッセー風漫画」???   ―― 誕生の裏ばなし ――
著者が、最初に漫画にチャレンジしたのは少女漫画であった。しかし入賞したのは、新しいエッセー風漫画分野である。エッセー風漫画は、従来の少女漫画と違って、日常の生活の中から話題を拾い、画風も軽いタッチのものである。昔からある「さざえさん」や「どらえもん」も同様に、普段の生活をテーマにしているので親しみ易い。エッセーを漫画にしたものが「エッセー風漫画」で、エッセーに漫画のカットを入れたものが「さくらももこ読本」である。今回は青春時代がテーマ、自分の若い頃を思い出して癒される本である。