ITベンチマーキングSIGのご紹介」 |
富士通株式会社 久保野 邦子:10月号 |
今号からITベンチマーキングSIGの活動を皆さんにシリーズでご紹介していきます。
スタートとなる今号は、SIG創設の経緯と趣旨、全体的な研究活動の概要と活動状況についてご紹介します。
次号からは、具体的なSIGの研究活動について、個別テーマのWGごとに、リーダーとメンバーが記事を執筆します。
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☆ 企業・組織を超えてIT業界共通のPMの問題を解決していこう!
ITベンチマーキングSIGは、2002年の秋、丁度今から4年前に結成されました。PMAJ(旧JPMF)のIT関連の会員が増加する中で、IT業界のプロジェクトの問題はPMに関わるものが多く、問題の本質的な解決のためには、一つの企業だけでは扱いにくいものが多々ある、という問題認識が高まっていました。
そこで、『企業・組織を超えた実質的な研究活動を通して、IT業界共通のPMに関わる問題、課題を広く社会に提言し解決していこう、そしてIT産業の発展とPMの向上に貢献していこう』という趣旨に賛同する高い志と強い意志を持ったメンバーが結束してSIGを立ち上げました。
このコアとなるメンバーが集まってSIGの方向性について何回か議論を重ねた結果、SIGの目的、価値観を、次のように定めました。
- IT業界においてどのような問題が起きているかを共有して、
→ 業界としてのテーマを取り上げて、産業界、お客様、世界へ発信する。
→ ベンダー、開発者として、生産性向上、品質向上を図る共有できるものをまとめる。
さらに活動の成果を母体組織にフィードバックすることはもとより広く社会に展開していこう、そしてPMAJの会員価値、社会的価値を高めていこうということにしました。
☆ 幅広い層のメンバーで実質的な研究活動
PMAJの良さの一つは、PMの先達であるエンジニアリングや製造をはじめとする多業種の会員から構成されていることです。そのためIT業界だけでなく異業種の知見、ノウハウを結集することができます。エンジニアリングや製造などの先輩達にもSIGのメンバーになっていただきました。
メンバーの職業も幅広く、PM実務者はもとよりPMOの方、経営者の方、コンサルタントの方などさまざまです。PMの経験の深いシニア層からPMに関わって間もない若い層まで、経験、年齢もさまざまです。異なる環境、経験、年齢のメンバーなので、議論を始めると視点の異なる多様な意見が出てきます。
これら幅広い層のメンバーの経験、知見、ノウハウを結集してテーマを決め、テーマごとにWGを組織化して、PMAJならではの実質的な研究活動で具体的な成果を生み出しています。 |
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☆ 活動テーマはPMの仕組み、PM技術、PM人材育成・活用など広範囲
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研究活動のテーマはコアメンバーが定期的に起案し議論して決めています。プロジェクトの失敗を防ぐこと、プロジェクトのパフォーマンスを向上させることなどが大きな関心事になっていて、PMの仕組み、PM技術、PM人材育成・活用のジャンルについて6つのテーマのWGで研究してきました。
さらにこの秋から新たに3つのテーマのWGが立ち上がり、活動の幅を広げています。 |
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テーマ/WG |
リーダー |
内容 |
PMの仕組み |
RFPベンチマーク
完了 |
梅村 良 |
RFPの質改善のために、RFPのベンチマークを行い、具体的なガイドラインとなる評価シートと提言を報告書として作成。 |
PM技術 |
PMナレッジ
完了 |
山本 哲也 |
失敗プロジェクト事例の分析から得た教訓を整理。 |
ヒューマン・コミュニケーションプロトコル |
板倉 稔 |
オフショアでの問題を分析し、プロトコル要素発見表など異文化コミュニケーション向上策の冊子を作成。 |
リスクマネジメントのポイント整理 |
浅田 誠 |
実際の場で役立つリスクマネジメントのポイントを分かり易く整理し、ガイドブックとして刊行予定。 |
プロジェクトマネジャーの成功条件 New!! |
佐藤 義男 |
日本におけるITプロジェクトマネジャーの成功条件をヒューマンスキル、技術などの視点から研究。 |
PM人材育成・活用 |
PSと人材活用 |
松尾谷 徹 |
プロジェクトメンバーの満足度を高めてプロジェクトパフォーマンスを向上させるアプローチを研究。 |
TPSに学ぶPM |
小原 由紀夫 |
トヨタ生産方式(TPS)の“カイゼン”のような行動をメンバーがとれるようになるとプロジェクトの成功確率は向上するのでないかという仮説を検証。 |
メンバーを元気にするPM行動、ダメにする PM行動 New!! |
松田 浩一 |
プロジェクトの活性化をメンバーの意欲の視点でとらえ、PMとして効果的な行動を研究。 |
IT系PMとエンジ系PMにおける人間系PMの相違 New!! |
渡辺 貢成 |
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☆ 成果の普及活動にも注力
研究活動の成果は、PM問題解決の理論化、知恵、PMノウハウなどさまざまですが、メンバーの熱い思いが成果として着実に実を結んできています。成果は関係者が広く活用できるように、右の写真のような冊子として出版し配布しています。
また、広く世の中に普及するために、PMAJの例会や秋のPMシンポジウムでの発表を恒例で行っています。RFPベンチマークWG、ヒューマン・コミュニケーションプロトコルWG、PSと人材活用WGの研究成果は、国内だけではなく海外の国際PM大会などでも発表して、いずれも高い関心が寄せられています。 |
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普及活動の一環としてIT業界の大きなテーマである人材育成にもつながるように、これらの成果をベースにしたセミナーやワークショップを開催しています。既にPSと人材活用WGではセミナーを実施していますが、他のWGでも開催の準備を始めています。
☆ 懇親会も楽しみ
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会議の後は懇親会で、和気あいあいの語らいの場が待っています。この場を楽しみにされている方も多いようです。毎日現場で奮闘している人たちの話に刺激を受けたり悩みに付き合ったり、バイタリティあふれる先輩諸氏の人生経験を聞かせていただいて勇気付けられたりと、終わった後はとても豊かな気持ちになります。 |
IT業界は今、人材育成が焦眉の課題となっていますが、社外のさまざまな人たちとの触れ合いはとても有意義で、SIGの場そのものが人材育成の場にもなっているようです。 |
今後とも、ITベンチマーキングSIGの趣旨、目的、価値観に賛同し、WGの活動に関心を持たれる方々に広く参加していただいて、活動の輪を広げていきたいと思っています。 |