理事長コーナー
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日本のプロジェクト力を推し量る

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :2月号

 2017年1月20日、米国第45代大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。その日、ホワイトハウスのホームページには新しい政権の基本政策方針が掲載された。トランプ大統領は、連日「大統領令」を発令している。TV、新聞、雑誌、ネットに係らず、トランプ大統領に関する報道であふれている。氏が大統領選に勝利することはほぼありえないとされていたため、マスコミ側の準備不足は否めない。大統領令の趣旨や影響度を解説しようとする世界中の報道関係者は少し慌てているように見える。当然、その報道に情報を依存している視聴者も戸惑っている。

 中でもエネルギー政策については、「アメリカ国民が利用するエネルギーのコストを下げ、アメリカの資源を最大限に活用し、海外から輸入される石油に依存しない政策を約束する」。また、「有害で不必要な温暖化対策は撤廃することを約束する。そうすることで、アメリカ人労働者の賃金を向こう7年間で300億ドル増やすことができる」とし、アメリカ国内でのシェールガス・オイルなどの開発等も積極的に進める考えを示した(@20170129現在掲載、NHKニュースWEB)。トランプ大統領の就任の結果、多くのプロジェクト計画が新たに具体化することだけは確かなようだ。

 そのプロジェクトを支える人材育成と供給源について調べてみた。プロジェクトマネジメント(PM)教育を提供する米国の大学は、学士47学部、修士100学部、博士1学部(”studypotals”@20170131)であった。修士は学士より倍以上のコースがある。博士が少ないのは、PMでは、研究者を世に出すことよりも次世代のPMの教育者(教授)を育てることが主眼なのであろう。

 ビジネスマネジメント専攻であるMBA(経営学修士)ではどうか。学部で各種学科を専攻し卒業後社会に一旦出て、数年の実務経験を経てのち、キャリアアップを目指す人はMBAを習得し、再び社会に戻る。その際、以前の職より年収の高い職に就くというのが一般的だ。受け入れる産業界もMBAで学ぶ内容を重要視していると云える。ちなみに全米で710コースある(”studypotals”@20170131)。PMについても、学士より修士に倍以上のコースが存在していることから、MBA程でないにせよ、産業界で一定の期待がされていると推測する。米国では、MBAもPMも重要な知識であり技能とされていると思うが、日本では、これらを教える学部・学科は米国に比べ極めて少なく、認知度が低いと言わざるを得ない。

 プロジェクトマネジメントが発展したのは欧米社会であるが、特に1950年代の米国で興隆した。人類を月に届けるNASAのプログラム、冷戦時の基地建設、石油メジャの大型製油所建設などを通して、1997年に抽象度の高いPMBOK®が完成した。欧米人はしばしば狩猟民族に例えられるが、その行動規範の根底には、自律率先型のリーダをプロジェクトマネジャーに選抜し、その指揮に従う行動様式がある。彼らは、外部情報に敏感であり、情報を極力高い精度で把握し、それを俯瞰的視点から駆使して戦略・戦術を決めプロジェクトを統率することを重要と考えている。狩猟を考えればこの特徴は分かり易い。また、イノベーションの多くは専門分野の境界で起きると云われているが、PMは、まさに専門分野の人材を束ね、目標を達成する方法論だ。プロジェクト遂行の過程は、イノベーションの起こす過程と十分重なる。

 日本では、内閣府・経産省が積極的に推進している「(日本を)世界で最もイノベーションに適した国」へと導くことを目標とした「第5期科学技術基本計画」において、「超スマート社会(Society5.0)」 では、イノベーション創出を伴うプロジェクトを通して新しい社会を生み出すとしている。まさにプロジェクトの塊となるはずだ。従って、各種プロジェクトを遂行するプロジェクトマネジャーの育成と供給、ならびに、一定レベルのプロジェクトマネジャー同士が切磋琢磨するコミュニティ作りが重要である。これらの人材を専門に生み出すべき大学でのプロジェクトマネジメント専業学科は少なく、大学教育だけに頼ることでは人材供給面からは心もとない。PMAJでも、普及活動と資格制度の活用を通じて、少しでも前記の状況を向上するための貢献ができればと思う。PMAJ会員や資格保持者をはじめとする多くのプロジェクト実践者・経験者のご支援・ご協力を期待したい。

以 上

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