関西P2M研究部会
先号   次号

『ゲートキーパー』をご存知ですか?

福岡 省一 [プロフィール] :7月号

 みなさん『ゲートキーパー』という言葉をご存知ですか?
 直訳すると『門番』ですが、厚生労働省のHPで『ゲートキーパー』を検索すると・・・
「我が国の自殺者数は平成10年以来12年連続で3万人を超える深刻な事態となっている。ここ2年は3万人を若干下回ったが、以前として先進7か国の中では我が国の自殺率が最も高く、15歳から34歳までの若い世代の死因で自殺がトップなのは我が国のみである。(中略)自殺対策の最重要課題としてゲートキーパー機能の充実・・・」という文章が目に留まります。
 それでは『ゲートキーパー』について少し解説いたします。
 ここに悩みを抱えた人がいます。この人は「誰かに悩みをうちあけることができない」「これからどうしていいのかわからない」という追い詰められた状況に陥っています。こんな時、身近にいる人が悩んでいる人に気づいてあげて、やさしく声をかけ、話を丁寧に聴いてあげて、適切な支援(医療機関、相談機関など)につなぎ、温かく見守るということができればうつになったり自殺を考えたりすることもないと思います。この役割を果たせる人が『ゲートキーパー』です。ちょっとしたノウハウさえ身に着ければ、だれでも『ゲートキーパー』になれます。
 私は本業の傍らボランティア活動としてNPO法人ゲートキーパー支援センターに参加し、昨年4月からは理事に就任し、NPOの運営にP2Mをフル活用して主体的に取り組んできました。
 ゲートキーパー支援センターの主な活動は、『ゲートキーパー』の養成セミナーを開催することです。昨年1年間で約千人の参加者を『ゲートキーパー』として世に送り出しました。正しい知識を持ち、適切な対応をする『ゲートキーパー』を養成することで、自殺防止、離職率の低下、虐待・不登校・犯罪の低減などが図れるものと信じて取り組んでおります。
 昨年の夏、美容師さんのグループから依頼がありゲートキーパー入門講座を開催しました。美容師さんは定期的にお客様の顔を見る機会(月に一回とか)があるので、お客様の変化に気づきやすいご商売です。ある時のこと、長年ご贔屓のお客様(40代女性)が久しぶりに来店されたのですが、表情の暗さがとても気になったそうです。長い髪を大切に手入れされていたのですが「短くカットしてほしい」とご注文があり、つい「どうかされたのですか?」と訊いてしまいました。その女性は「実は末期ガンで抗ガン治療に入るので髪を短くしたい。このお店に来るのも今日が最後になります。」とおっしゃったそうです。その後何も言葉が出なくなり、お客様をお送りする際も声をかけることもできず、幾日も落ち込んでしまったそうです。美容師さんは多かれ少なかれこのような体験があり、『ゲートキーパー』に対する意識も自ずと高くなるというお話しでした。このケースは自殺ではありませんが、死に直面した人に寄り添い、心おだやかにする支援も『ゲートキーパー』の役割と考えます。
 ゲートキーパーの活動を通じて、私のような凡庸な人間でも少しは世の中に必要とされているのかなと感じることがありました。これからも益々内容の充実を図り、様々な活動を通じてゲートキーパーを増やしていくことを私自身の使命とし、社会貢献できるように頑張っていきたいと思います。

※ NPO法人ゲートキーパー支援センターHP  (リンクはこちら)

以上

ページトップに戻る