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「エンタテイメント論」(74)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] 
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エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●創造の本質 ③ 絶滅する「種」と繁栄する「種」
(1) 絶滅種と繁栄種

 地球の歴史に於いて過去に大、中、小の隕石が地球に衝突し、大規模、中規模、小規模の気候変動を引き起こした。特に大隕石の衝突の場合、急激で、長期間、地球の全て巻き込んだ気候激変をもたらした。その結果、数多くの生物の「種」が絶滅した。
 しかしこれらの危機に直面しても絶滅せず、子孫を残し、繁栄した「種」が存在した。それは、生存のための「知恵」を発想し、繁栄のための「創造」を発揮した「種」であった。その生き残りと繁栄の生物の「種」の中の1つが「人類」である。



●(2) 構造的危機に直面した日本
 「生物」の生存と繁栄の「仕組み=秘訣」は、「国家」の生存と繁栄のそれに十分活用できるのではないか。その理由を説明する必要はないであろう。
 しかし敢えて述べれば、生物の「種」の1つである「人類」が空間的(場所)、時間的(歴史)に形成した実体が「国家」であるからだ。
 筆者は、約20年前から機会ある毎に次の事を主張してきた。現在の日本は、明治維新と戦時を除き、殆ど全て分野に於いて、近代史上初の構造的危機に直面した。もし自己改革(一種の革命)を断行せず、今のままで推移すると、確実に衰退し、アジアの小国に凋落する。



 当初は、この主張に多くの人から厳しく批判された。最近は、殆ど批判されなくなった。しかしちっとも嬉しくない。何故なら筆者は、当初からこの現状認識と近未来予測が間違っている事を内心期待してきたからである。この期待に反して現実は認識通り、予測通りに推移している。
 「自己改革」とは、既存・法体系、既存・社会体系、既得・権益集団など「既=現状」の存在を創造的に破壊することを意味する。それには「優れた発想(思考)」と「真の発汗(行動)」という創造活動が同時に求められる。まさしく生存と繁栄の仕組み(秘訣)が構築され、実践されねば、日本の再生と繁栄はあり得ない。

(3) 大激変の時代の世界
 現在の世界は、大隕石衝突による地球的規模の気候激変に近似した、国家的、社会的、政治的、経済的な大激変の時代に存在する。



 米国も、アジア諸国も、欧州諸国も、この大激変の時代に、国も、企業も「既=現状」を打破し、「本気と本音」で自己改革に取り組んでいる。
 一方日本は、オバマ大統領の日本訪問という絶好の機会を生かさず、多くの国民の利益を最優先せず、豚肉業界や自動車業界などの一部の「既」の業界保護を優先する一方、「自由貿易」の目的と効用(例:TPP)を米国と共に、他国より先んじて実践するという「世界のリーダー」に躍り出る絶好の機会まで失った。日本を滅びる「種」に属させてはならない。

●創造の本質 ④ 生物界、自然界に実存する「共通性」
 花の形状、鳥の羽、氷の結晶の写真をじっくり見て欲しい。「何を感じられるか?」

花の形状、鳥の羽、氷の結晶


落雷、神経細胞、幹細胞、DNA螺旋階段の写真に、「何を感じられるか?」

落雷、神経細胞、幹細胞、DNA螺旋階段


海岸線、山の稜線、雲の形状に、「何を感じられるか?」

海岸線、山の稜線、雲の形状


以上の写真には「共通性」がある。それは以下の通りである。
生物にも、自然にも「数学的秩序(例:フラクタルなど)」が実存すると感じられる(その実存の一部は証明済)。
我々が目にし、耳にし、肌で感じ、匂い、味わう生物や自然は、「美しい」と感じられる。
生物も、自然も、生存又は最適を目指して、神か? 何者か?によって創造された実体と感じられる。
 筆者が主張したい事は、「創造は、人間だけの特権ではなく、生物にも、自然にも元来備わっている特権」ということである。
 この様に考えると、人間の発想と創造による「知」、更に高次の「英知」は、生物系、自然系、更に宇宙系から観れば、何ともちっぽけな「存在価値」しかない様に思えてならない。
 「人間よ、自惚れるな! 謙虚であれ!」である。

●創造の本質 ⑤ 生物界、自然界に実存する「等価性(Analogy)」
 上記の「数学的秩序」、「美しさ」、「創造性」が実存する「共通性」は、言い換えれば「等価性(似たもの)」の実存を意味している。
 この「等価性」の観点(Aspect)から生物界、自然界を観察すると数多くの等価性の実存に気付く。その観察を地球外に広げれば、宇宙界にも実存することが分かる。まさに驚きである。

⑤―①木の枝、川の河口、肺臓の血管脈の存在する等価性
 木の枝、川の河口、肺臓の血管脈は、順に「植物」、「自然」、「人間」の一部で、それぞれ全く異質のものである。しかし「分配」という観点から観るとそれらの中に「等価性」が見えてくる。
 木の枝は「樹水の分配」、川の河口は「川の水の分配」、肺臓は「ガス交換&酸素の分配」を行う。この分配効率を高めるため、3つ異なるモノの中に、神か? 何者か?が「枝分かれ構造」という仕組みを創造したのである。

木の枝、川の河口、肺臓の血管脈


⑤―②木から落ちるリンゴと月の等価性
 ニュートンは、「木からリンゴが地面に落ちる瞬間」を観測(彼自身がこの事実を記録。真実の逸話)した。その時、彼は「月が地球に落ちる」という「等価性」に気付いた(仮説設定)。
 ニュートン以外の数え切れない人物が「リンゴが木から落ちる瞬間」を目撃していた。しかし誰もこの「等価性」に気付かなかった。
 彼は、「月はリンゴの様に地球に何故落ちて来ないのか?」と疑問を持ち、その理由を探求した。もし彼がこの等価性を仮定しなかったら「万有引力の法則」は生まれなかった。



⑤―③台風と銀河の等価性
 地球上の台風の目は、巨大な空気の回転によって生じる「渦」、遥か宇宙のかなたの銀河の目は、巨大な星雲の回転によって生じる「渦」。両者は完全に「等価」である。
 この様な「等価性」の仮説の設定、仮説の証明、証明結果の活用によって「宇宙物理学」や「宇宙工学」が飛躍的に発展した。これは、医学、化学、工学などについても同じ事がいえる。
 更にマクロの世界だけでなく、ミクロの世界でも「等価性」が至るところに実存する(説明省略)。

地球上の台風の目は、遥か彼方の銀河の目と等価する。
地球上の台風の目は、遥か彼方の銀河の目と等価する。


●人類の歴史=創造の連鎖
 この等価性が実存するから、人間は未知や不確定なモノやコトガラに対しても、等価を「推論」の糧にして、「仮説の設定」を行い、その「仮説の証明」をすることで「創造」を実現させてきた。
そして人類は、「等価性」の活用による「新しい発想(思考)」と「真の発汗(行動)」と云う「創造」と6百万年?の延々たる所謂「創造の連鎖」によって現代の国家、社会、経済を形成した。

●等価変換理論
 この「等価性」による「発想」と「発汗」こそが「創造の本質」である。この「等価性」に着目し、創造の基本的考え方と具体的方法論を「等価変換理論」として世界で最初に構築した人物は、故・市川亀久弥博士(京都大学教授)である。
 なお筆者の提唱する「夢工学」は、「夢」を起点とする「トータル・エンジニアリング」であるが、同時に「等価変換理論」に準拠した「逆・等価変換理論」でもある。従って「夢工学式発想法」は、「逆・等価変換理論」を更に実務的、実用的に発展させた発想法である。

つづく

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