関西P2M研究部会
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交渉力向上で、プロジェクトを円滑に進めましょう

関西P2M 小田 久弥 [プロフィール] :10月号

1.はじめに
 プロジェクトでは、様々な局面で、様々な相手と、様々な規模の、様々な内容の交渉が数多く行われます。たとえば、お客様との間で、スコープの範囲、スケジュール、金額を決める交渉、あるいは、プロジェクトの中で課題が発生し、当初の計画を変更せざるをえない状況になった際、お客様や、協力会社との間で発生する交渉、また、プロジェクトの内部で役割分担を行う際の交渉、その他にも様々なケースがあり、プロジェクトマネージャは、いろんな交渉を行っていると思います。
 私は、現在、企業向け教育ビジネスに従事しており、PM教育を主に担当し、様々な企業とお付き合いさせていただてます。その教育カリキュラムの中に「交渉学」というものがあります。交渉の進め方、ポイント等についてまとめられた知識、手法で、非常に有効だと思います。「目からウロコ」のような内容も含まれてます。今回は、この「交渉学」について、皆様のプロジェクト遂行の役に立てればと思い、概要をご紹介したいと思います。
2.交渉にまつわる誤解
 交渉学は、欧米で研究、体系化され広まったものです。最近、書店に行くと「交渉学」あるいは「交渉術」と言ったタイトルの本が、ちらほら目につくようになってきました。大学で講義として取り入れたり、社員教育の一環としてし取り入れている企業も増えてきています。しかし、従来、日本ではあまり広まっていませんでした。それは、交渉そのものに対する誤解があったからと言われています。誤解と、交渉学の持つ本来の意味をBefore/Afterでまとめてみました。
誤解 ①
Before
交渉学とは、「相手を丸め込むテクニック」といったような、あまり良くないイメージを持つ人が多かった。
After
交渉学では、交渉を次のように定義している。「交渉とは、相手との信頼関係を構築するために行うものであり、相手を丸め込んだり、打ち負かしたりするものではない。」
誤解 ②
Before
交渉が上手い、下手は才能によって決まる
After
交渉技術の習得は、学習やトレーニングによって誰でも向上させることができる。それを実現できるものが交渉学である。
誤解 ③
Before
交渉は落としどころを見つけて合意することが目的である
After
交渉の目的は、落としどころを見つけて合意することではない。相手との信頼関係を構築するために行うことなので、交渉の条件が合わなければ、無理に合意するのでなく、「合意しない」という選択肢もあり得る。合意しなかった場合どうするかということもあらかじめ考えておく。
 日本では、交渉学は、これから広がってゆくという状況ですが、欧米では大学等で、多数の学生が交渉学を学んでいるようです。交渉学を知っているのと知らないのでは、交渉の結果に大きな差が出ると言われてます。最近、グローバルのプロジェクトやビジネスが増えてきたため、交渉学を学んでいる欧米の方と、交渉学を学ばずに交渉に臨む日本人というケースも増えてきていると思います。このような背景もあり、交渉学が急速に広まってきたのだと思います。
3.交渉の進め方概要
 それでは、交渉学の概要について説明します。
1 ) 事前準備
 まず、大切なことは事前準備を行うことです。PMと同じ「段取り8分」ですね。時間に余裕のない交渉もあるでしょう。でも、5分でも良いので、交渉の前には事前準備を必ず行うようにしましょう。では、事前準備では何を行えばよいか?次の3点は必ず考えをまとめてください。
目的(ミッション)
  なんのためにこの交渉を行うのかを明確にします。ミッションは、「この交渉をまとめること」等の短期的なものよりも、この交渉の先に何を目指すか(たとえば、末永く信頼関係を結ぶ等)といった視点で考えるほうが良いです。
合意できるゾーン
  合意できる最高の条件と最低の条件を具体的に決めておきます。まずは、最高の条件を引き出せるように交渉をスタートします。この範囲の中であれば合意します。
最低条件を下回った場合の対応
  最低条件を下回った場合の対応も事前準備であらかじめ決めておきます。たとえば、いったん中断して、別途再開とする。あるいは、この相手との交渉はこれで終了し、別の相手との交渉を開始する等の対応です。
2 ) 交渉時の留意点
 全てはご紹介できませんが、主要な留意点をまとめます
いきなり本題に入らない
  はじめての交渉相手の場合、信頼できる相手なのか見極めることが非常に大切です。
いきなり本題に入らずに「雑談」をして、どのような相手なのかを把握することも大切です。
できるだけ情報を引き出す
  できるだけ、相手にお話しをしてもらえるように、コミュニケーションを進めるようにすることもポイントのひとつです。
タイムマネジメント
  時間が決まった交渉が多いです。また時間が決まってない場合でも、長時間にわたる交渉は良くないです。時間を意識した交渉を行うことも大切なポイントです。
ブレイク(休憩)
  話が煮詰まったり、平行線でこれ以上交渉を続けても進展が見られないような場面では、ブレイクを入れることも有効に働くことがあります。
4.終わりに
 ここで書いた内容は、交渉学のごく1部の内容です。でも、これだけ知ってるだけでも役に立つ内容もあると思います。P2M 関係性マネジメントの中で、ステークホルダーの関係性を円滑に維持するためのポイントとして、交渉学が挙げられています。プロジェクトマネージャが身に着けるべきスキルのひとつだと思います。今は、書籍やeラーニング、研修等交渉学を学ぶ方法はたくさんあります。みなさんも、いちど交渉学を学んでみられたらいかがでしょうか。

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