例会部会
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第167回例会報告

例会部会 三浦 嘉倫 [プロフィール] :12月号

  日頃、プロジェクトマネジメントに携わっておられる皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回は、10月に開催された第167回例会についてご報告致します。

【データ】
開催日時: 2012年10月26日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「多様化する職場のマネジメント ~社内英語公用語化宣言後の問題~」
講師: ジャパン インターカルチュラル コンサルティング シニアコンサルタント
小野田美紗子氏

 今回は、ご自身の海外業務経験を活かした異文化理解コンサルタントとして、ジャパン インターカルチュラル コンサルティング日本支店を立ち上げられ、2012年6月まで代表を務められていました、小野田美紗子様(以下、講師)に、今様々な業界で話題となっている「社内英語公用語化」の現場報告や頻繁に起こる問題を取り上げながら、国籍を含めて多様化している職場のマネジメントについてお話いただきました。

■ 社内英語公用語化が目指すものは何?グローバル人材とは?

 「社内英語公用語化宣言」という現在巷で話題になっている刺激的な副題がそのまま受講者への質問となって講座は始まりました。社内英語公用語化がめざすものは何ですか?
 社内英語公用語化がめざすものは、
グローバル企業の構築
グローバル人材の育成
 それでは、グローバル企業とは何ですか?やグローバル人材って何ですか?と質問が続いていきます。講師はグローバルな職場、人材として4つの項目を挙げました。
(1) 世界の頭脳とコミュニケーションできる。
(2) 発想は本社で、製造は世界で。
(3) 現地の状況に素早く対応できる。
(4) 多様性を受け入れ、自分を調整できる。
 特に講師は、世界中を優れた「人材・頭脳」が回流のように世界を動き回っている状況で、多様性を受け入れるだけではなくいかに多様性を活用できるかが重要であって、異文化への対応は不可欠な状況であることを強調します。

■ 英語は必要です。しかし英語ができればコミュニケーションできますか?
 21世紀を生き延びていく企業としてグローバル化は避けられない状況下、コミュニケーション手段として英語は必要と講師は断言します。活躍する中国や韓国のビジネスマンは英語を流暢に話すが、彼らは決して才能で英語を話しているわけではなく、ものすごく努力しているということを忘れてはならないと。ただ、英語は重要なスキルではあるものの、「コミュニケーションの方法」や「多様性を理解する」ことはより一層重要と強調します。

■ あなたの言語依存度の傾向は?
 ここで講師は受講者に対して5つの質問をし、回答によって各々の言語依存度、つまり言語に頼ったコミュニケーションを中心としているのか感覚的な非言語的コミュニケーションを中心にしているのか自分の位置を確認しました。
 言語中心コミュニケーションの傾向は次のようなものが挙げられます。
コミュニケーションするには、言葉をたくさん使う。
細部に渡るコミュニケーションが重要であると思っている。
曖昧さを居心地悪く感じる。
 一方、非言語的コミュニケーションの傾向としては次のようなものが挙げられました。
言葉を沢山駆使しなくても、コミュニケーション出来る。
体の動き、声のトーン、顔の表情に注意を払う。
共通の背景知識と歴史に頼る。
行動は言葉より多くを語る、と思っている。
 この言語中心コミュニケーションを最左に、非言語的コミュニケーションを最右に置き、両極のあいだに世界各国のコミュニケーションの言語性の位置を置いて比較したものを資料で提示。日本が非言語的コミュニケーションの最右端である一方、左端の言語中心コミュニケーションはドイツとのことでした。このコミュニケーションの言語・非言語性の軸のアイディアは元々欧米の研究者によるものとのことでしたが、講師および実際にアジア等各国の人々自身による評価や実感も入れ込んだものとのことで、非常に興味深い資料です。

■ 日本の文化的背景とは?
 コミュニケーションの言語依存度で、世界でもっとも非言語的と評価された日本でのコミュニケーションの文化的背景として講師は以下の点を挙げました。
短いコミュニケーションを好む。
一を聞いて十を知る。
言外の意味を読み取る。
 いわゆる「あ・うんの呼吸」が求められる世界です。これに対し欧米などの言語的文化では言われたことだけが真実であり、意図が伝わらなかった場合は伝えた方である話し手に責任があると理解されています。

■ 外国人社員からたびたび聞く言葉、日本人社員からたびたび聞く意見
 日本の企業で働く外国人社員からたびたび聞かれる言葉は、
決断は素早く、はっきりとしてほしい。
指示が具体的でない。
説明が少なく何を言いたいのか分からない。
フィードバックがないので日本人の考えが分からない。
 というようなもので、英語などの言語のことではなくコミュニケーション上のことと意思決定のことに集中しています。
 一方、職場に外国人社員がいる日本人社員から度々聞かれる言葉は、「正しく内容が伝わっているのか分からない。」「なぜ伝わらないのかわからない。」「先方が理解できていないのか、言葉の指示が曖昧なのか分からない。」といった不安感に基づくものが続きます。
 講師から指摘があったのが、例えば「言い訳ばかりして、決して謝らない。」という指摘は、外国人側にしてみれば“謝るということは全責任をとることになる”という考え方に基づいていることがあり、また「できないのに、「できます」と言う。」という指摘は、グローバル企業に入る人間は必ずトライしてくるタイプが多く“出来ない”とは言わない、というような、グローバルな職場にすでに存在している多様性を十分理解できていないことに起因する不満が多いということです。

■ 異文化コミュニケーションの定義
 本題である異文化コミュニケーションの定義として講師が述べたのが以下のことでした。
日本人は外国人になる必要はない。しかし、日本人は外国人のやり方とその背景を理解する必要がある。日本のやり方を外国人に押し付けることは適切ではない、
外国人が日本人になる必要はない。しかし、外国人は日本の文化について勉強する必要がある。日本のやり方についてオープンマインドで接する必要がある。
 日本の企業に勤めている人々にとっては、日本人がグローバルな職場の仲間達のやり方と背景を受け入れていくこと、さらに活用していくことが重要ということでした。

■ 日本企業とその従業員の課題 ~終わりに
 最後に講師がまとめとして、日本企業と従業員の課題を挙げてくれました。
社員のグローバルマインドの育成
職場の英語化の促進
決断のスピード化
 加えて述べられたのが「多様性への対応、多様性のマネジメント」です。

 テーマとして社内英語公用語化に触れられていましたが、講師の主張は、グローバル競争時代において英語は単にスキルであり、真に重要なのは国際的な多様性を理解しさらにその多様性を活用していく「グローバルマインド」であるということでした。

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