PMプロの知恵コーナー
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ファシリテーション型ワークショップの実践例

竹腰 重徳 [プロフィール] 
  Email : こちら :10月号

 ファシリテーション型ワークショップは、予め討議の対象となるテーマを決め、テーマに関係する人を一堂に集め、集中的に討議を行うセッション(会議体)で、中立的な議事進行役(ファシリテーター)によって運営されます。この技法により、参加者間の信頼が構築され、相互の関係が親密になり、コミュニケーションが改善され、新しいアイデアの創出に威力を発揮し、全員が合意する結論を効率よく効果的に導くことができます。

 特にアジャイル(スクラム)におけるスクラムマスターが、スクラムチームメンバーが集まり新しいアイデアを創出したり、メンバー全員が合意して物事を進めるように支援する技法として大変有効です。

 筆者は、情報システム構築のプロジェクト計画を策定する場面で、このファシリテーション型ワークショップ手法を使い、各機能部門にまたがる主要なステークホルダーを集め、集中的に効率よく短期間に実施計画を策定し、プロジェクトを成功に導いてきました。筆者が実践したファシリテーション型ワークショップ技法を以下に述べます。

ファシリテーション型ワークショップの準備事項
  ワークショップ実施のための事務局を立上げる。
  ワークショップの目的(テーマ)を明確に定義する。
  スポンサー(テーマの責任者)を決める。
  参加メンバーの選定を行う。(人数は10人前後が理想)
  実施場所を選定する。(期間中はワークショップに専念できるような場所)
  ワークショップのアジェンダを作成する。
  参加メンバーにワークショップのやり方や事前準備事項を知らせ、ワークショップの準備をお願いする。

ファシリテーション型ワークショップの実施
  ファシリテーターの留意点
    ワークショップの開始時に、ワークショップの目的、進め方、下記に述べるようなルールを説明し、参加メンバー自身がワークショップの成果物に責任を持つことを理解してもらう。
    討議が始まったら議論の内容に入り込まず、中立的な立場を守る。
    議論の論点がずれないよう導く。
    参加メンバー全員に意見を述べる機会を与える。
    参加者同士の相互理解、意志疎通、オープンなコミュニケーションを促進し、信頼関係が築けるようにする。
  ワークショップ中参加者が順守するルール
(ファシリテーターは参加メンバーが以下のルールを順守するように導く)
    全員が全期間参加する。
    傾聴を心がける。
    よく考えて創造力を発揮する。
    簡潔に適語を使って表現する。
    発言内容は見える化する。(ポストイットやフリップチャートなどを使う)
    テーマをスリップしないで集中討議する。
    自分の論拠をはっきりさせ明確な意思決定をする。
    全員合意。(対案がなければ賛成)
  ワークショップの流れ
    ステップ1. 環境の認識(目標、現状の確認、問題点やニーズ)
    ステップ2. 解決策(長期計画)
    ステップ3. 短期の活動計画(マイルストーン、詳細計画)
    ステップ4. フォローアップ計画(活動計画実行をフォローアップするための計画)

ワークショップ後の活動
(策定した計画の実行を確実に行うために、重要な活動である)
  ワークショップ内容を文書化し、スポンサーに承認を得る。
  短期の実行計画を実施する。
  短期の実行計画が着実に実行されているかを確認するためのフォローアップのワークショップを同じような要領で実施する。

ワークショップの効果(参加者のアンケート結果)
  参加メンバー全員の共通理解と共通の方向性を確認できる。
  全員同意の目標、問題点、対応策、計画を短期間で整理できる。
  お互いの信頼関係を構築できる。
  チームの自律性とチームワークが高まる。
  参加メンバー全員のモチベーションが高まる。
  参加メンバーのファシリテーションスキルが向上する。

実践したテーマの例
  企画設計開発システムの構築計画作成
  販売物流システムの構築計画作成
  生産管理システムの構築計画作成
  プロジェクト計画策定
  顧客の要求定義
  情報システム戦略の策定

その他のコメント
重役等が参加する場合や、仕事の都合による途中退席が想定されるケースでは、宿泊の必要な遠隔地を開催場所とし、ワークショップに集中できる環境を作ると大変効果があります。夜の自由時間に簡単な懇親会を開くと、お互いが本音を語るようになり、参加者間に信頼関係が築かれ、その後のプロジェクト進行が非常にスムーズになります。

以上

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