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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~ネットワーキング力~

井上 多恵子 [プロフィール] :7月号

 『イノベーションのDNA』という本を読んでいる。『イノベーションのジレンマ』を執筆して話題になったクレイトン・クリステンセン氏をはじめ、ジェフリー・ダイアー氏も執筆者として名を連ねている。本には、イノベータと言われる人は5つのスキルを用いていること、そして、5つのスキルの中の一つが、ネットワーク力だと書かれている。「イノベータは知識の幅を広げるために、多様な背景や視点をもった人たちとの出会いを精力的に求める」という。
 そして、ネットワーク力を伸ばすためのヒントとして、下記の点をあげている。
1. ネットワークの幅を広げる
    自分とまったく異なる背景や考え方をもっていそうな人に会う
2. 食事時にネットワーキングをする
    自分と経歴がまったく異なる人と少なくとも週に一度は食事をする計画を立てる
3. 1年に少なくとも二度は会議に参加する
    自分の専門分野と関係のある会議と、無関係なテーマの会議を一つづつ選んで出席する。
4. 創造の場をつくる
    刺激を与えてくれそうな人を何人か選び、創造性を掻き立てる場所で定期的に集まり、
    トレンドや新しいアイデアについて話し合う
5. 外部から人を招く
    意見を求める
6. 合同研修を行う

 確かにこれだけやれれば、いろいろと刺激を得ることができそうだ。ここにあげられている6つのヒントのうち、読者の皆さんは、何点を実行できているだろう。私が今実行できているのは、「1. ネットワークの幅を広げる」ことと、「6.合同研修を行う」ことだ。今の仕事を通じて社内外のさまざまな人と会い、ネットワークの幅を広げている。会社から要請を受けて参加している社外の女性団体の活動では、私より年齢が若い人たち、職業も異なる人たちと会っている。特に私は彼女たちに対して英語指導をやっており、その中で、彼女たちが考えていることや、職場での想いに触れることができている。英語指導の場で、自己紹介をしてもらったり、自分の関心があることを英文にしてもらったりしているからだ。
 この女性団体は、この7月に、米国に研修旅行に行く予定を立てている。現地では、アメリカ人の女性たちとさまざまなネットワーキングの機会があるということで、その準備として、6月は相当な数の人たちに英語指導を行った。その中で、彼女たちがネットワーキングを通じて得てきたことや、ネットワーキングについてもっと知りたいと思っていることに触れることができた。30代中心の彼女たちは、ある意味ピュアだ。初めて社外の人とネットワーキングをした、という人も随分多く、ネットワーキングを通じて得てきたこととして、次のような点をあげている。
1. モチベーションが高い女性たちと接し、自分も頑張ろう!という刺激を得ている。これまで思わなかったが、私も、管理職を目指そうと思う
2. 社内にはいない、ロールモデルを見つけることができた
3. 新しい視点を得ることができた

活躍する米国の女性たちに聞きたい点として多くあげられていたのが、
1 ) ネットワークを維持する秘訣
2 ) メンターをどうやって見つけたか
3 ) 困難をどうやって乗り越えたか
である。

 冒頭で紹介した『イノベーションのDNA』では、「食事時にネットワーキングをする」ことを推奨していた。今回米国研修では、彼女たちは国際貿易に従事する女性たちとの朝食ネットワーキングの機会がある。まさに本で書かれていることを実践していることになる。今回仕事の都合で残念ながら私自身は参加ができないが、彼女たちの出張みやげ話を聞くことをとても楽しみにしている。
 彼女たちを見ていると本当に頼もしい。とにかく熱心だ。仕事もし、この団体の活動にも参加し、週末に私のところに英語指導を受けにくる人たちが何人もいる。米国での研修に備えて少しでも話ができるようになりたい、ととても前向きだ。ネットワーキングのパワーを知った彼女たちが、これからどんな成長を遂げるのか楽しみだ。
 翻って私たちはどうだろうか。PMAJ協会という団体が提供しているネットワーキングの可能性を十分に活かしているだろうか。私自身忙しさにかまけて活かせていない。その反省も込めて、改めて、PMAJ協会の存在の価値、自分にとっての意味を考えてみたい。
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