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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~コミュニケーション力~

井上 多恵子 [プロフィール] :7月号

 プロジェクトマネジメントにおけるコミュミケーションの重要性については、本連載でも何度か取り上げてきた。P2Mの4部11章を講義する際にも、章のテーマであるコミュミケーションマネジメントが上手くできないと、他のスキルをいくら見に付けてもプロジェクトを成功させることが難しい旨を伝えてきた。
 最近、以前にも増してコミュミケーションの重要性を感じている。今年開催されたASTD(American Society for Training & Development=米国人材開発機構)のASTD International Conference & Exposition(世界中から企業の人材育成関係者やコンサルタント、教育機関・行政機関のリーダーなど10,000人規模の参加者が集まるASTD国際会議)でも、コミュミケーションを取り上げた基調講演やセミナー型勉強会が目立ったと言う。
 2日目の基調講演では、キャンベル社のCEOであるDoug Conantと、人材育成コンサルタントであるMette Norgaardの2人が、「短い質の高いコミュニケーションが職場にいかにポジティブな影響を与えうるか」について語った。2~6秒程度の短くて温かく心に残る言葉のことを彼らは、「タッチポイント」と呼んでいる。例えばある仕事を仕上げた部下に対し、その仕事が期待値に達していない場合に、「駄目だ」と突き返すのではなく、「君ならもっとできると期待している」といったような言葉をかけることを指すのだそうだ。
そういう言葉をかけ続けることにより、社員の活性化が進むという。人員削減等により、かつてのような時間的な余裕が無い今日では、特に、「短い質の高いコミュニケーション」が求められるらしい。この「タッチポイント」を上手く活用することで、キャンベル社は社員の仕事に対する気持ちを高めることに成功したと言う。
 皆さんも、経験は無いだろうか。誰かにかけてもらった言葉でとても元気が出たり、反対に、誰かに不用意に投げられた言葉でやる気が無くなったりしたことが。私は、幾度となく経験している。以前部署を異動した際、同期の男性から「きっと成功すると確信しているよ」というメールをもらったことがある。異動してみたら、当時の私にはとても対応できない大変さで、成功とは程遠かったけれど、私のことをそこまで評価してくれる人がいることは気持ちの支えになった。仕事ができずに悩んでいた私に、「できることだけやってくれればいい」と応援し、自分の部署に引っ張ってくれた人もいた。その一方で、「なんでこんなこともできないの?今まで何やっていたの?」という冷徹な言葉を投げた人もいた。コミュニケーションが難しいのは、その人の性格や、相手との関係性などによって、この同じ言葉を聞いて発奮する人もいれば、ショックを受ける人もいるということだ。さらにやっかいなのは、人の気持ちは変わるということ。ある時は問題無く受け入れることができても、その時の心理状態により、別の時は、心にぐさっとくることもあるという点だ。
 プロジェクトマネージャーの大事な役割の一つが、メンバーをモチベートすることだ。その際に、コミュニケーション力は鍵を握る。プロジェクトのゴール、目指す姿をどれだけ想いを込めて共感してもらえるように話すことができるのか、タスクをアサインする際にそのタスクの意義とその人に頼む理由をどう伝えるのか、仕事のプロセスやアウトプットに対し、どういう言葉を投げかけるのか、これら一つ一つを丁寧に考えて、その時々に応じた形で実行しなければならない。評価されて嬉しく無い人はいないと知っていても、つい褒めることを忘れがちだ。フェイスブックが人気を博している理由の一つが、誰かの投稿に対し、ボタンを押すだけで、いとも気軽に「いいね!」というメッセージを伝えることができることだ。「いいね!」と友人に反応してもらえることが嬉しくて、フェイスブックをやっているという知人がいる。口には出せなくても、「誰かに認めてもらいたい」という気持ちは多くの人が持っているのだろう。このことを認識し、プロジェクトマネージャーとしては、メンバーに短くてもいいから、「見てるよ」というメッセージを伝えるべきなのだろう。
 しかし、わかっていても、実行するのはたやすくない。私も管理職になり、コミュミケーションの難しさを実感している。自分ではコミュミケーションを取っているつもりでも、相手はそう感じていない場合もある。気を使って話しをしているつもりでも、相手は冷たい対応をされたと感じる場合もある。そこで、最近やり始めたのが、朝会だ。立ったまま、皆に知ってもらいたいことやその日の予定を話し合う。それでコミュミケーションが改善されるかどうかはわからないが、少なくとも、週1回だけではなく、コミュミケーションの場を日々持つことが第1歩だと思う。
 皆さんは、プロジェクトメンバーとのコミュミケーションの改善のために、何をやりますか?
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