図書紹介
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「おひとりさまの老後」
(上野千鶴子著、竃@研発行、平成19年12月25日、22刷、263ページ、1,400円+税)

デニマルさん:3月号

この本の初版は7月だが、同年末に22刷である。従って数多く印刷されているので人気の程を表している。この人気を探ってみた。先ず、高齢化社会(女性85.3歳、男性78.4歳で世界一の長寿国)で、いずれ自分も関係する必要性からであろうか。次に、女性向けに書かれ、それも一人暮らしの女性を対象にしている点にある。特に著者は、女性学、ジェンダー研究等でこの道のパイオニア的存在である。専門分野の経験から「一人暮らしで何が悪い」と個が確立されている人に勇気を与えている。今まで負け犬等々いろいろ言われていたことにキチント答えを出している。女性だけでなく男性が読んでも勉強になる。誰でも歳をとる。そこでどう生きていくかは、一人ひとり自分で解決すべき問題でもある。

おひとりさまの備え   ―― みんな最後はひとり ――
女性は、結婚して子どもができて家庭を守り、家族と共に生きていく。だから人生の幸せは、いい相手に恵まれた結婚=幸福公式のようにいわれてきた。しかし女性が職場で働き、自立するようになって次第にこの公式が怪しくなってきた。結婚しない女性の増加、離婚率の上昇、旦那の死別等々で二人以上の家族から、一人で生活する女性の比率が高くなってきた。高齢化等で一人暮らしが当たり前となった現在、いつまでも夫婦や家族と共に生活することを考えないで、誰しも最後は独りと自覚して自立すべきであると書いている。

ハード・ソフトの備え  ―― ジャーどう暮らせばいいのか ――
そこで一人暮らしをする場合のノウハウを色々と紹介している。現在の家にそのまま住むのか、どこかで家を買うのか借りるのか、老人ホームはどうだろうか等々、住むことを考える必要がある。これがハードウェアである。このハードウェアも一人で生活するのか、誰と一緒に生活するのかで変わってくる。誰とどんな風にかは、ソフトウェアの部分である。家族なのか、再婚も考えるのか、一人でのリゾート暮らし等々、その人のライフスタイルである。更にその生活を支える年金や貯蓄等の経済的問題も充分考える必要がある。

最後の備え  ―― 孤独死をどう考えるかも必要である ――
どんなライフスタイルであれ、どこでどう生活していてもいずれは天に召されていく。その時のことも考えなくてはならない。遺産、遺品等の処分や葬式等を書いた遺書をどうするかもある。著者は、孤独死について面白いことを書いている。人は生きてきたように死ぬ、その選択は生きている自分自身が自然に決めているという。死ぬ時は、みんな一人である。但し、早く発見されるような手配も考えるべきとの専門家の意見を付け加えている。

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