図書紹介
先号   次号

「そうだ、葉っぱを売ろう」  過疎の町、どん底からの再生
(横石知二著、ソフトバンククリエイティブ社発行、2007年09月10日、初版1刷、215ページ、1,500円+税)

デニマルさん:12月号

この本を読む前に、何度かテレビでこの報道特集というか、元気なおばあちゃんの活躍振りを見た。その時は、葉っぱでも商売になるのかという程度だったが、この本を読んで葉っぱに秘められた著者の地道だが壮絶な努力を知った。この本には、日本が現在抱えている市町村の問題、高齢化、過疎化、人口減少、老人医療・福祉問題、財政破綻等々の解決のヒントが書かれているように思う。このビジネスが世間の注目を集めるまでには、著者の20年以上の献身的な活躍があった。当人の健康(心筋梗塞で入院)や家庭(給料を殆んど家計に入れず、家にも帰らず仕事に打ち込む)を犠牲にしての葉っぱビジネスの立ち上げである。この本は、著者と町の人々との夢を実現したヒューマンドキュメントである。

葉っぱがお金に変わるまで(その1)   ―― とんでもない過疎の村 ――
四国で最も人口の少ない徳島県勝浦郡上勝町は、過疎化と高齢化の進んだ町である。農業指導員として農協に就職した著者は、当初腰掛程度の積もりだったと書いている。所が、昭和56年の異常寒波で主要作物の「ミカン」が全滅に近い被害を受けた。「ミカン」に代わる農作物として、促成販売できる「野菜」へと転換を図り急場を凌いだ。それが現在では、主要商品になり農家を支えている。この野菜類を全国に売り歩いたのが著者である。

葉っぱがお金に変わるまで(その2)  ―― 葉っぱがお金になる ――
その野菜を売り歩く過程で、若い女性が料理の“つま”に添えられた「紅葉の葉っぱ」に感動している光景を見た。料理と葉っぱは一体である。そこで葉っぱには商品価値があることを発見し、以来葉っぱの商品化のために料亭通いを始めたのだ。これが健康を害し、身銭を切っての活動だったが、見事に葉っぱを料亭に納めるビジネスに作り上げた。料亭のニーズにあった葉っぱを集め、農家のおばあちゃんの収入となるビジネスモデルにした。

葉っぱがお金に変わるまで(その3)  ―― 彩(いろどり)会社ビジネスの成長 ――
葉っぱが主力商品に成長し、著者は20年弱勤めた農協を去ることを決意した。しかし、葉っぱを支えたおばあちゃんたちの嘆願で退職どころか、「いろどり」の役員として残ることになった。現在は社長として葉っぱビジネスを切り盛りしている。このビジネス成功の結果、お年寄りは元気に働き病気を知らず、若者も故郷にユーターンして人口減少の歯止めがかかっている。町も活性化して、現在では老若男女が一緒になってまち興しを担い、いわば理想的な形で進行している。この本にはそこまでに至る男のロマンが凝縮されていた。

ページトップに戻る