図書紹介
先号   次号

健康問答
(五木寛之・帯津良一著、平凡社発行、2007年04月04日、1刷、271ページ、1,400円+税)

デニマルさん:8月号

健康ブームといわれて、何年経つであろうか。日本の平均寿命は世界一であるが、老いも若きも健康に関する感心は高い。そして健康で長生きしたいというのではなく、病気をせず健康でいたい。寝たきりで家族に迷惑を掛けたくないというのが本音であろうか。この本は、作家と医師との健康全般に関する対談を纏めている。その中味は、全体を通して人間はいかに生きるべきかを、それぞれの立場で教えてくれる指南書的なものである。作家の五木さんは、健康というより人間としての生き方に重きを置いて、病気や生活や食のあり方について質問し、自らも語っている。一方帯津先生は、医師の立場から西洋医学、東洋医学を統合した新たなあり方を通じて生活習慣、常識、昔からの養生訓を交えて話されている。この本は「身近な健康の話題」を分かり易く、奥深く話された哲学書でもある。

食の常識を点検してみる   ―― (例)塩分はあまり摂らないほうがいい ――
昔から、塩分を摂り過ぎると血圧に良くない。だから塩分控えめがいいと言われている。ところが、地方によっては他県に比較して多めに塩分を摂っていても長寿県という所もある。世界の塩は、文明のルートを築くくらい人間が生きる上で水と共に欠かせない基本的なものである。「納豆を食べればダイエットできる」と納豆だけを食べるという偏ったやり方同様に、極端な減塩は健康に良くない。ある程度意識的に摂った方がいいと言っている。

健康の常識を点検してみる  ―― (例)メタボリック症候群は、本当に危険か ――
メタボリックとは、内臓脂肪型肥満に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態で、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上をその対象とした。しかし、諸外国の事情によって基準値が異なっている。この本では、健康を数字で表すには無理があり、あくまで参考値である。もっと大切にしなければならないことは、生命のエネルギー(命の場)を高めることであり、健康は生活環境の中で育まれる自然な営みであると書いている。

「なら、どう生活したらいいのか」  ―― 現在の養生訓を考えてみる ――
どう生活したらいいかは、どう生きるかに繋がる。貝原益軒が「養生訓」(飲食を少なくし、病気を助長するものを食べず、色欲を慎み、精気をもらさず、怒り・悲しみ・憂い・思いなどの感情に激しないこと)として人の生き方を記した。ここでは「気休め、骨休め、箸休め」であると書いている。現在は、この養生訓も進化し積極的に命のエネルギーを高める養生である。一つのことにこだわらないで、何が良いか多面的に考えて生きるのが現代である。

ページトップに戻る