「なぜなぜ5回について考える」
株式会社FFC 小原 由紀夫:6月号

  トヨタにおける改善の中で原因を見つける手法としてなぜなぜ5回が使われている。PMシンポジューム2008において、1日目ITトラックと2日目のIT−SIGからのセミナーでなぜなぜ5回が企画されている。TPSに学ぶプロジェクトマネジメントWGからリーダが「なぜなぜ5回」についての考えを記す。

1.真因は問題から遠い
 なぜなぜ5回とは、「5回のなぜを繰り返して、原因の向こうに隠れている真因を突き止める」と書籍に書かれ、30年前から公開されている。真因とは、2度と発生しない対策を自然に導くことを意味する。真因は、問題を起こす原因の向こうに隠れているので、問題が起きている現象から遠いところにある。
  対策と同様な意味を持つ言葉として、処置、対処がある。しかし、応急処置、暫定対処と使われることがあるため、根本対策として使われる対策が使われる。転んで血が出た場合を例として、処置、対処、対策を比較する。
(応急)処置として、流水で傷口の血を流す。見た目は傷口から血がなくなり、きれいに見えるが、再び出血する可能性は残る。
(暫定)対処は、応急処置に加え、傷口に絆創膏を貼り、出血を止める。出血は止まり、傷は治るが、再び転ぶ可能性がある。
(根本)対策は、応急処置、暫定対処に加え、通路を整備し、通路の維持管理の運営を最適化する。これにより、二度と転ばなくなる。

2.「気をつける」、「頑張る」に頼らない
 人の行動精度について考える。第1に、人は完璧ではないので、人がミスをすることはある。第2に、人は全員同じではなく、得意・不得意がある。第3に、人は常に同じではなく、日によって調子が異なることもある。つまり、人の行動精度にはバラツキがある。従って、「気をつける」や「頑張る」といくら強く思っても、それだけでは、2度と発生しないことにならない。「気をつける」や「頑張る」だけでは対策にならないことを認識し、現場が、気をつけられなかった、頑張れなかった理由を「なぜ」を使って明らかにしていく。人の行動精度にはバラツキがあるが、お客様へ提供する製品やサービスを均一にするための真因を明確にする。

3.現場だけでは対策しきれない
 なぜなぜ5回を進めると、今、考えれば判ることが、実行できていないことが見つかる。これに対して現場で実施できる対策は現場で実施する。しかし、その時は実行できなかったことと、真因は現象から遠いため、現場だけでは全ての対策を実施できないことを認識する。全ての対策を実施するためには現場への支援が必要になる。対策の効果を議論し、支援内容と達成目標を合意する。支援を得た現場は合意した目標へ対策を実施し、支援者は対策の効果を見届ける。対策完遂に向けた良い緊張がある環境となる。

4.なぜなぜ5回の階層モデルがある
 「なぜなぜ5回」の5回は、真因に辿り着くための必要条件であり、5回以上はなぜを繰り返さないと真因には辿り着かないこと意味する。「なぜなぜ5回」の十分条件は、真因を探すことであり、真因に辿り着かなければ、6回、7回、8回とさらに繰り返えす。 3回までは現場の問題、5回で組織の問題に辿り着くと言われている。2日目のセミナーでは、ITプロジェクトのなぜなぜ5回の階層モデルを紹介するので、ご興味ある方は参加下さい。

以 上

<参考文献>
1. トヨタ生産方式 大野耐一著 ダイヤモンド社
2. ザ・トヨタウェイ ジェフリー・K・ライカー著 稲垣公夫訳 日経BP社